ダイビング中に浮きも沈みもしない状態を中性浮力と呼びます。
この中性浮力を身に付けることが、初心者ダイバー脱出の条件になってるかも。
100本、200本も潜っていて、中性浮力ばっちりなダイバーに聞いてみても、その答えは曖昧で、「数を潜れば、自然と身につく」という意見も多いはず。
今回はあえてこの難しいテーマに挑んでみようかと思います。
初心者ダイバーの方、必見の内容だと自信を持ってご紹介!
- 過剰ウエイトは極力減らすべし
- BCDよりも呼吸で調節すべし
- 呼吸の浮力コントロールのキャパシティーを知るべし
- 中性浮力ができているという自信を持つべし
1.過剰ウエイトは極力減らすべし
ウエットスーツを着用する限り、ダイバーは必ずウエイトを付けなければならない。
ウエイトはただ沈むために付けるのでは無く、水面でのスーツの浮力を相殺するだけだという認識を持ってほしい。
深度が深くなると、ウェットスーツは圧縮されて浮力が小さくなり、さらにマイナス浮力になります。だったら、BCDに吸気すればってことになるのですが、この空気の量が大きいと浮力のコントロールは我々インストラクターでも難しくなります。ほんの少しの上下でも、BCD内の空気の体積変化が大きいので、ちょっと上がるとボーンと浮上して、ちょっと下がるとドーンと沈んでいくということに。なので、絶対にオーバーウエイトにならないようにってことが、中性浮力をマスターする上でも必須条件となります。
ライセンス講習のときに適正ウエイト量の見積もりとして、「BCDの空気を全て排気して、水面が目の高さになるように」とあったかと思います。それでは、呼吸のリズムが速い人は一向に沈めないし、何よりもダイビング後半にタンクの空気消費に伴い軽くなって、沈めなくなることもしばしば。なので、マニュアルをよく見ると、適正ウエイトの状態からタンクの浮力増加分を考慮して1、2キロウエイトを追加するという記述があります。
ただ、これではどう考えても重くなりすぎるような気がするし、海に入ってから、またウエイトを取りに行くのかって思っちゃいます。
実践的なウエイト量の見積もりとしては、「たっぷり空気を吸った状態でギリギリ水面に留まれるくらい」とすると解決します。ただ、上級者はこれよりも軽いウエイトでヘッドファーストで潜降する方法がありますが、ここでは初心者の方を対象にということが前提となります。
これなら、呼吸のリズムが速い人でも確実に潜降でき、ダイビング後半にタンクが軽くなっても、自分の呼吸でなんとか浮力をコントロールできると言えます。
Cカードを取得して以来、ずっと同じウエイト量という方は一度コレを試してみてはいかがでしょうか?
2.BCDよりも呼吸で調節すべし
呼吸で浮力をコントロールするというのは、言い換えれば、浮力変化のタイムラグを利用することだと思ってください。
ダイバーであればご存知かと思いますが、息を吸って肺が膨らんでも、すぐには体は浮いてこないということです。この息を吸ってから浮かび始めるまで、息を吐いてから沈み始めるまでの時間差を利用します。
浮きたいときは、息を吸って浮かびます。そして息を吐くけど、沈み始める前に息を吸い始めればまた浮いてくるということです。沈みたいときはこの逆になりますね。
このように、吸ってる時間、吐いてる時間を調整することによって、上下の動きは呼吸でコントロールすることできます。
ただ、BCDを使えば容易に上下することができますが、一度BCDに吸気したなら、必ずダイビング後半にその分を排気しなくてはならないということを覚えておいて下さい。
1.の過剰ウエイトが無い状態であれば、水深15mぐらいまではBCDを使わずとも、呼吸のみでコントロールできるはず。そして水深15mよりもさらに深くへ潜った場合、呼吸でも追いつかないときに、初めてBCDに吸気するものだと思ってください。
3.呼吸の浮力コントロールのキャパシティーを知るべし
ま、ここまではどのインストラクターでも説明するところだと思います。
で、一体どのぐらいの浮力を呼吸でコントロールできるのか?
この限界を知ることで、呼吸による浮力コントロールに絶対的な自信を持つことができます。
その限界を知る方法ですが、一番いいのはウエイト渡しゲームです。
まずは1.の適正ウエイトで潜って、水中でウエイトを1キロ手渡しで受け取って、呼吸で中性浮力、できたらまた1キロを渡して行く。もう限界というところで、今度は1キロずつ減らしていきます。最後は適正ウエイト以下にまで減らします。このようにすることで、吸い気味の呼吸、吐き気味の呼吸をマスターでき、さらには、浮力変化のタイムラグもしっかりと体感することができます。何度か練習すれば、-2キロから+2キロぐらいはいけるようになりますよ。
上級者ダイバーが適正ウエイト以下で潜れるのも、呼吸で浮力をコントロールすることによって、タンクが軽くなっても沈むことができるのです。
さらには、ダイビング中にほとんどBCDの操作が必要なくなるというメリットもありますよ。
4.中性浮力ができているという自信を持つべし
ここまでくれば、もう中性浮力に自信がついたことだと思います。
2.でも述べたように、浮力のコントロールのカギは呼吸です。その呼吸を落ち着いて行うためにも、常にダイバーはリラックスした状態でいなければなりません。上手く中性浮力ができないという不安は呼吸を乱し、余計にできなくなってしまうものです。
あとは、多少の上下は気にしないということもあります。
中性浮力なんて、だいたい出来ていれば、十分なんですよ。
特に、頻繁にBCDを操作しているダイバーはこのことをよく覚えておいてほしいと思います。
だって、そんなことばかり気にしていては、ダイビング自体が楽しくないじゃないですか!